ほとんどの総合病院やクリニックでは、経鼻内視鏡を含む通常内視鏡検査→生検病理検査→(がんあるいはそれを疑う生検病理結果が得られれば精密検査)といった形で、精密検査は生検病理結果が出たあとでようやく行われます。
ところが、生検病理診断は大きな病変から米粒のような粘膜組織を採取して行いますので、情報が限られています。熟練した病理医でもしばしば診断の難しいケースがあります。つまり、「がん病巣から組織を採取して検査しても必ずがんの結果が出るとは限らない」のです。一目見てそれと分るようながんもあれば、とても診断の難しいものもあります。
生検病理検査でがんの診断結果が出なくてもさらに詳しく調べていくべきかどうかの判断は、初回の内視鏡検査でどれだけ詳細に病変を観察したか否か、にかかっています。初回の内視鏡検査こそ全力で取り組むべきなのです。決して手を抜いてはなりません。敵(がん)はとてもてごわい病気です。

大腸検査をしているときに治療の必要なポリープを見つけたら、その場で摘出するようにしています。
消化管内視鏡検査は胃や大腸のような消化管の粘膜の色や形の変化を見て診断します。消化管に閉塞がある場合、閉塞のその先に何があるかを知ることはできません。また、粘膜の下の情報を得ることは難しいです。また、消化管の働き(蠕動や消化吸収)を知ることもできません。消化管内視鏡検査でしばしば行われる生検病理(粘膜の一部を採取して顕微鏡で調べる検査)は非常に有力な診断手段ですが、これも万能ではありません。大きな病変の中から米粒のような組織をサンプルとして採取するので診断に限界があります。がん病巣からの生検材料であってもがんの組織診断が得られない場合があり、鵜呑みにできません。