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【院長ブログ】ピロリ菌が引き起こす病気

2025.07.17

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌は胃粘膜表面の粘液の中に隠れて生活する病原菌(病気の原因になる細菌)です。胃の中は強い酸で満たされているので、胃の中には細菌がまったく住めないと長い間考えられていました。顕微鏡で観察すると、粘液の中に小さなゴミみたいな異物が混じっていることがあるのは実は昔から多くの人が経験していたのですが、まさかこれが細菌だとは誰も思わなかったのです。1980年代にこの細菌(ピロリ菌)が培養同定された時には世界が大変に驚きました。ピロリ菌には胃粘液の尿素を分解してアンモニアを作り出し胃酸を中和することができるという、特殊な能力があったのです。ピロリ菌が酸性環境下でも平気で生きていられる秘密が解明されたことも、また世界中を驚かせました。
ピロリ菌の研究が進むと、さらに衝撃的な事実が明らかになってきました。ピロリ菌の産生する毒素が胃粘膜を傷害し、いくつかの疾患と深く関わっていることがわかってきたのです。中でも衝撃的だったのは日本人に多い「胃がん」とピロリ菌感染との密接な関係です。ピロリ菌が胃がんの発症だけでなく、胃がんの発育・進展に非常に大きく関わっていることが明らかになり、胃がんを診断する上でピロリ菌感染の有無を確かめることは欠かせなくなりました。
このような流れから幼少期に感染したピロリ菌が胃粘膜を傷害する期間が短い方が胃がんを予防できるのではないか、若年者を対象にピロリ菌感染診断を行って早めに除菌治療することが将来の胃がん予防につながるのではないか、という考え方が一般的になりつつあります。公費を使って高校生にピロリ菌の検査と除菌治療をする。このような取り組みが京都府をはじめ、いくつかの自治体で実施されていることを耳にされた方もおられるのではないでしょうか。

ピロリ菌が関与する病気

ピロリ菌が関与する病気で最も多いのは、「慢性萎縮性胃炎」です。人間ドックや健診で胃カメラやバリウム検査を受けて、レポートに「萎縮性胃炎」「萎縮粘膜」などと書かれた方も多いのではないでしょうか。萎縮と聞いて、自分の胃が他の人よりも小さくなったのではないかと心配された方もおられるかもしれませんが、萎縮性胃炎というのは胃粘膜の厚みが薄くなり、粘膜の丈が低くなることを意味しています。胃のサイズはいっしょです。男の人の髪が薄くなって生えぎわが後退するように、胃粘膜の薄いところが禿げ上がってくる現象・・・これが萎縮性胃炎です。萎縮性胃炎の何が問題かというと、そこに胃がんが発生しやすいということです。ドックや健診で「萎縮性胃炎」と言われたらどうすればよいか?まずはピロリ菌が現在胃の中に住んでいるかどうかを調べること、次に胃がんが発生してこないかどうかを定期的にチェックすることです。大切なことはピロリ菌を除菌した後も「萎縮性胃炎」の状態は慢性的に続き、胃がんにかかる危険はゼロにはならないのだということです。
このほかピロリ菌は「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」「胃悪性リンパ腫」のような胃の病気だけでなく、血小板(血液細胞の一種 出血を防ぐ働きをする)の数が減って足に紫色の斑点が出てくる病気「特発性血小板減少性紫斑病」や鉄欠乏性貧血のような血液の病気、慢性じんましんのような胃以外の病気の原因のひとつとして挙げられています。
ピロリ菌が発見されてから約40年が経ちましたが、まだまだ分からないことも多く、研究が進められています。

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